ネパールの人々のくらし
インドと中国にはさまれているというネパールの位置、ヒンドゥー教と仏教の絡み合った影響、民族の多様性、これらが慣習と信仰に複雑な混成を生んできた。
ネパール人の人生は家族を中心としている。自分の家族への忠誠とその民族グループの慣習の実践は絶対的なものだ。規律を破ることは一族と共同体の中での孤立を招く恐れがある。若いネパール人、特に都会に住んでいる者は欧米の価値観と慣習に感化されているが、大多数の人々は伝統的な慣習と徳義にしたがって生きている。ほとんどの部族は複合家族や枝分かれした大家族が一軒または数軒を分かち合って暮している。小さな村になると、ひとつの枝分かれした大家族が共同体の全員ということもある。食糧の栽培と収穫が村の生活の中心で、全員が手伝う。
子供たちはとても可愛がられ、家族の重要な一員だ。子供を持たないという話はまず聞かれず、子供がいない人を、ネパールの女性はとても気の毒に思うだろう。子供は楽しみの元であり、農園では臨時の労働力となり、成長後は世話をしてくれる存在だ。
見合い結婚がまだ一般的だが“恋愛婚”も増えてきている。結婚の取りまとめにはさまざまな方法がある。娘の家族にはすでに決められた相手か、ふさわしいと選ばれてきた男性たちが紹介され、その中から娘が夫を選んでもよい。幼児婚は1963年以来、法律で禁止されている。現在の女子の平均結婚年齢は19歳を下回る。婚姻によって結ばれる親類関係は大変重要な事柄であり、異なる部族間での結婚はめったにない。
結婚においては、男の子を持つことが今でも重要視されている。特にヒンドゥー教徒の家族の場合、長男にしか行えない宗教儀式があるためだ。女の子は親兄弟の助けとなるだけの収入を得られないため重荷に過ぎず、嫁にやってしまう存在だと考える部族もいる。
共同体の中では年寄りは尊敬を集め、子供たちに大事にされる。老年とは休養、祈り、瞑想の時期なのだ。
ネパール料理
食事&飲み物
総じてネパール料理は確かにおもしろみに欠ける。ヒンドゥー教徒のネパール人はベジタリアンで、日常食はたいていがダル・バート・タルカリdal bhaat
tarakariと呼ばれる料理。これは文字通り、“レンズマメのスープ”と“ご飯”と“カレー味の野菜”だ。運がよければ、アチャールachar(漬物)が一皿つき、もしかするとチャパティchapati(インドの無発酵パン)か、ダヒdahi(カードまたはヨーグルト)か、パーパルpapad(インドのパパダム−カリカリした薄焼きせんべい風)が付いておもしろみが加わることがある。カトマンズKathmanduのレストランでは時折、観光客の好みに合うように調理されたダル・バート・タルカリがあり、これは申し分なくおいしい。地元版ダル・バート・タルカリ一点張りで、トレッキング中に来る日も来る日も食べていると、本当にうんざりしてしまうかもしれない。
ネパール人はたいてい、パーンpan(ビンロウジ)という嗜好品で食事をしめくくる。歩道の上の、血がぽたぽた落ちているように見えるあの小さな赤い点々は(普通は)パーンだ。
農業
エコロジー
タライがネパールの“米どころ”といわれているが、標高2000m以下の土地や、ネパール西部では2000m以上の土地でも、さかんに米作が行われている。通常、雨季の前に育てた苗をすぐに田植えし、秋に収穫する。気候がよい年は、米を収穫した田んぼに麦を植えて、春に収穫する。
黄色い花が一面に咲くアブラナ畑は、料理用の油を取るために育てられている。また、トウモロコシは山の斜面で育ち、キビは田んぼよりも標高の高い場所で育つ。ピンクと白の花を一面に咲かせるソバの実と大麦は、さらに高地で種をまく。シェルパ族は、4000m付近にまでジャガイモを栽培している。
そのほかにも、大豆、レンズマメ、トウガラシ、ゴマなど、さまざまな穀物が細かく区画分けされた道路わきで育っている。
村や野原には、木がたくさん植えられていて、木陰、果物、家畜の飼料、薬用に役立っている。バナナ、マンゴー、パパイヤ、かんきつ類、桃、リンゴなどは遠隔の丘に暮らす人たちの、新しい収入源となっている。西部では、村々にタバコ畑がよく見られる。また、大麻を作るためのカンナビス畑もある。イラクサはトングで収穫し、煮てトゲをやわらかくしてから野菜として食べる。各種イチジクの木々は、巡礼者と旅人に木陰を与え、ベンガル菩提樹とテンジク菩提樹が作る立派なキノコ形の天蓋は、必ずといっていいほど、てっぺんに人夫用の石の台座が置かれていて、かつぎ人夫が荷を置いて休んでいる。
洋服&刺繍
ショッピング
チベットやネパールの洋服は昔から人気の高い商品ではあるのだが、完全に観光市場を狙った欧米で流行の洋服もまた最近は大きな産業となっている。タメルThamelにある小売店ではオリジナルのシャツも買える。
ヤケッツと俗に言われるチベットウールジャケットのような伝統的な服装の需要もいまだにある。前合わせにして4本の紐で結んでとめる、昔ながらの紫色のビロード製であるネパールコートもまた人気の商品である。
刺繍はネパールではつねに好評で、カトマンズ周辺には数多くの小さな洋裁工場があり、そこでは商品となるジャケットやジーンズに色鮮やかな竜やチベットを表すさまざまな絵を縫い付けるミシンのカタカタなる音が夜遅くまで絶えない。登山家たちは「X国、Y年、Z山頂遠征隊」というメッセージのついたジャケットを着てネパールに戻って来たがる。また「エベレスト・ベースキャンプまで徒歩で到着」や「アンナプルナ山Annapurna一周達成」と書かれたリュックサック用のバッジも買える。
ショッピング
エンターテインメント
ネパールは買い物天国だ。お金をかけないで土産物を探すにも本物の美術品を求めるにもいいところである。カトマンズKathmanduの観光客が集まる界隈でたいていの物が手に入るが、カトマンズ盆地Kathmandu
Valleyの別の地域に行くと、その土地独自の特産品がある。どこで買うにしても値段の交渉を忘れないこと。ただし観光客だけを相手にしている店だと、価格が固定していて安くならないことが多い。
カトマンズやポカラPokharaでは外国製品が安く手に入るが、たちまち何に金を払ったかを知ることになろう。特にタメル地区の店は、インドで印刷された質の悪い本やパキスタンの海賊盤CDや、ネパール製の着心地の悪い服であふれている。
覚えておいてほしいが、古美術品を国外に持ち出すことはできない。出国時の手荷物はネパールの税関によって、入国時よりも徹底的に調べられる。古美術品かもしれないものを買ったなら、店から領収書とその品の説明書きをもらうこと。もしそれが100年以上前のものかもしれないのなら(その可能性があるというだけでも)、考古学局Department
of Archaeologyから国外持ち出しの許可を取る必要がある。
店の信頼性が十二分に確信できない限り、買ったものの宅配は頼むべきでない。